無題

母の見舞い。
たまに譫言を言う。会話の中で、たまに脈絡の無い事を言ったりするので、モルヒネが原因なのだと思っていた。しかし、それを除けば普通に会話はできる。弟から電話で、ずっと寝ていて話しもできないと聞いていたので、少し安心した。
母が冷蔵庫にあるメロンを食べていけと言う。本人曰く、メロンではなく西瓜が食べたいらしい。結構美味しいメロンだったので、思わずパクパクと食べていたら、父に全部食べないで残しておけと窘められる。
しばらくして、京都から伯父が訪ねてきた。まったく不意の訪問だったらしく、母も驚いていた。伯父は、手にメロンをぶら下げてきた。それを見た母は、少しがっかりしたように見えた。
伯父に泊まっていくように勧めたが、とんぼ返りするらしい。
しばらく話をしていたら、母は眠ってしまった。薬の原因なのか、30分くらい寝て、30分くらい起きるという繰り返し。
母親が寝たのを見計らってか、父が、待合室で話そうと伯父と私を手招きした。
待合室で父は小さな青いメモ用紙をポケットから出した。小さく折りたたんでくしゃくしゃな、その紙を開いて、一言「一ヶ月」と言った。
待合室は見舞客が多く、周りの雑談の中でよく聞き取れなかった。伯父の表情が曇ったので、父に首を傾げてみた。その時、不思議と「何が一ヶ月?」と素直に聞けなかった。
「母さんの余命は一ヶ月だって」
私の表情を察して、父がそう言った。しばらく、頭が真っ白になった。その後、父がいろいろとメモ用紙を見ながら説明していたが、殆ど内容を理解できずにいた。わかったのは今日、主治医の先生から、そのように説明があったというのと、脳にもガンが転移しているらしいという2つ。
母が、たまに譫言を言うのは、それが原因なんだろうか。
昨日、父は看護師から携帯電話の番号を聞かれて、携帯は持っていないと答えると、お子さんの携帯電話の番号を教えてほしいと言われたらしい。何故、急に連絡先を聞くのか疑問に思い、そのことを聞こうとして予期せず余命告知を受けたそうだ。
父は、まったくの機械音痴のなので、母に母の携帯に登録されている私と弟の電話番号を出してくれと頼んだらしい。しかし、母は携帯の操作がうまくできず、なかなか番号を出すことができなかったそうだ。
大の機械好きで、先週まで普通にSkypeでコールしてきた母が、たった1週間で携帯の操作すらできなくなくなっているのを知り、なんだか怖くなった。
病室に戻ると母は起きていた。伯父が久しぶりに兄弟で集まろうと母に言った。
母は7人兄弟の次女で、私が子供の頃には、よく「兄弟会」といって、母の兄弟の集まりに連れて行ってもらった。伯父は、それをやろうと母に提案した。
母は「病気がよくなったらね」と答えた。
私は、その場にいるのが、とても辛かった。

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